名古屋市南区、笠寺観音の門前町として栄えてきた「笠寺観音商店街」。2018年と2023年の「ナゴヤ商店街オープン」に参加し、ここ7年ほどで空き店舗だった場所に個性豊かな飲食店やシェアスペース、新たな活動として「かさでらのまち編集室」も誕生し、盛り上がっているまちとして注目される機会が増えてきました。
この地で長く暮らし、まちを見守ってきた人々はその変化をどう感じているのでしょうか。商店街で長年お店を構える「鳥辰」の藤井友子さん、「時計・宝石・メガネのナイトウ」の内藤瑞重さん、そして「かんでらmonzen亭」の代表であり、2022年から商店街振興組合の理事長を務める青山知弘さんに、変わりゆくまちの「現在地」を語ってもらいました。

藤井:商店街で営んでいるうなぎ屋「鳥辰」がわたしの実家です。結婚してしばらくは他のまちで暮らしましたが、縁あって笠寺に戻ってきました。出たと言ってもお店はずっと手伝っていたので、年齢とほとんど同じくらい笠寺に関わっています。
内藤:実家は明治時代から続く宝石と時計の店で、わたしで4代目になります。このまちで生まれ育ったので、「笠寺歴=年齢」です。
青山:笠寺との関わりは20年くらい。2006年頃にどこかでまちづくりに関わりたいという思いがあって、名鉄の神宮前駅から1駅ずつ降りてみて関わるまちを探していました。その時に初めて笠寺に降り立ち、一目惚れして翌年に引っ越してきました。
青山:笠寺観音の前の道のカーブと石垣が京都に似ていて、そこに惚れました。碁盤の目になっている名古屋で、こんな佇まいのまちがあるんだと驚いて。
一同:そこなんだ(笑)
青山:商店街には門前町の雰囲気があって、旧東海道がそのまま残っているけど観光地化はされていなくて素朴なまま。これは何かできそうだとポテンシャルを感じたんです。2007年4月に引っ越してきて、当時の商店街の理事長に「一緒にまちづくりをしましょう」って声を掛けて、その翌月にまちづくり団体の「かんでらmonzen亭」を立ち上げました。
内藤:わたしは商店街の会計担当をしていて、青山さんが理事長、鳥辰さんが監査なので、日頃からやり取りしています。青山さんの存在はずっと知っていたけど、話すようになったのは2022年に会計になってから。地元の盆踊りの活動もしていたので、顔は見かけていたけど、「何やってるんだろう、このおじさん」って思ってました(笑)
青山:商店街の役員が改選になるタイミングで、次を担う人に関わってもらいたいと思って内藤さんに会計をやらないか声を掛けたんです。
藤井:わたしはコロナ前にマルシェに出店するようになって、その頃に青山さんと初めて話したのかな。夏祭りのイベントの時にも少し話す機会があって、同い年なんだと知って驚きました。

青山:「かさでらのまちビル」の当時のオーナーに許可をもらって、屋上でミツバチを飼わせてもらっていたんです。その頃はまだスナックが入っていたんですけど、どんどん店舗が抜けていって。駅前だしまちの中心だし、オーナーにも義理がある。なんとかしたいと思って、当時の理事長と相談して2018年の商店街オープンに手を挙げました。
藤井:変わっているのは間違いないと思います。これまでは住んでいる人がお店をしているのがほとんどでした。みんな高齢になって後継者がいないと店を閉めてしまう。最近は外から来て新しくお店をする人が増えてきた印象があります。ただ、同じ商店街でも信号を挟んで東西に分かれているから、全体で活気が出てきたかと聞かれると正直わかんない。
内藤:元々あったお店の店主さんが高齢になって、営業時間がどんどん短くなっていって。夜にやっているお店ができてから明るい雰囲気になって、防犯的にもまちの賑わい的にもありがたいなと思っています。2007年くらいに「この商店街はもうダメだ」って思っていたけど、商店街の会員さんも最近増えてきてよかったと思っているところです。
青山:これまではイベントを中心に、人と出会う機会をつくってきました。商店街にシェア食堂やシェア本棚、通えるお店ができたことで、行けば誰かに会えて人とつながりやすくなりました。「かさでらのまち食堂」では飲食店の人たち、「かさでらのまち箱」では本が好きな人たちと、1店舗できるごとにまちに関わる人の層が広がっていると感じています。
青山:「マチ・スタンドmotokasa」では、月に1回場所を借りて鉄道模型の活動をさせてもらっているし、「かさでらのまち箱」では一角を借りてミニショップをやっています。普段はお店に行くというより、理事長の立場で商店街のポスターやチラシを持っていくことが多いですね。
内藤:新しいお店にも行くようにしてますよ。「ブタコヤブックス」さんは2回くらい行ったかな。犬の散歩をしながら、今日も賑わってるな〜って覗いてます。
藤井:新しくできたお店には行ってみたいし、通りがかったら気にはしてるんだけど、中の様子が見えにくかったり、店主のこだわりがあったりするだろうからなんか入りづらくて。昔からまちに住んでいる人や近所のお年寄りとは顔馴染みなんだけど、新しい人は顔も名前もわからない。お店をしているからなかなかイベントにも出れなくて、コミュニケーションを取る機会がないのが現状です。
内藤:わたしも新しいお店は入りづらい感じがしたけど、1回行ってみると意外と大丈夫。最初の一歩にハードルがあるかもしれないですね。
藤井:個人的には、せっかく新しいお店や取り組みができても、まちの人に伝わっていないのがもったいないと思っています。お客さんに「今日は何かイベントをやってるの?」って聞かれるんだけど、monzen亭が発行している「かんのん新聞」も最近お店に届かなくなったから、商店街の中にいるわたしがまちのことを知らなくて。
青山:実は「どんな活動をやっているのかわからない」と鳥辰さんから意見をいただいたこともあって、新聞をつくるようになりました。最初は全部のお店に配っていたんだけど、最近は疲れちゃったから置く場所を減らしてたんです。来月からは鳥辰さんにも持っていくようにしますね。
青山:年に1回の商店街振興組合の総会くらいかなあ。みんなお店の営業時間が違うから、なかなか全員は集まれなくて。
藤井:昔は商店街の人で日帰りで蟹とか食べに行ってたんですよ。家族を連れていく人もいたから、お互いの顔もわかるし。冬には餅つきとかイベントもやってましたね。新しい人が入ってきて元々いた人が役割を頼まれなくなると自然と足が遠のいちゃうし、今は住んでいる人と商店街のイベントが分かれてしまっているような感覚があります。
内藤:みんなで蟹を食べに行く時代があったとは知らなかった…!わたしも「誘われてないのに行くのもな…」って遠慮してしまうことがあったので、その気持ちはよくわかります。わたしが20代の頃は上の世代の結束力が強かったから、関わりたいのに入っていけないって時もありました。
藤井:最近はLINEでのやり取りが増えたので、わたしが家族に言わなかったら情報が伝わらないこともあって。やっぱり顔を合わせて話すって大事だし、お年寄りの多いまちだからこそ、住んでいる人たちを大事にしていきたいと思っています。
藤井:面倒かもしれないけど、ひと声掛けることをやっていきたいですね。隣近所の人に「こういうことやってるよ〜」って一人ひとりが伝えていく。笠寺観音にわざわざ来たんだろうなって人も見かけるから、もっとまちのことを知ってもらうために、みんなで発信をしていけたらいいなと思います。
内藤:なんでもお誘いは「来てね」って声を掛けるのが一番いい。ネットで情報は得られるけど、行くかどうかはその人次第になっちゃうし。ちゃんと顔を合わせて話したことがない人もいるだろうから、まずは「総会来てね」って声を掛けるところから!
青山:ふたりの言うように、もっとコミュニケーションを取って楽しくやっていきたいな。地元のことをよくわかっている藤井さんも、監査だけじゃなくぜひ一緒に関わっていきましょう。
「笠寺観音の参道に気軽に立ち寄れる甘味処ができたらいいよね」
「笠寺観音の池で収穫した蓮根を使って、まちの名物がつくれたらいいよね」
たくさんの「こうなったらいいな」という妄想話が飛び交い、まちの現在地を知り、未来にワクワクする時間となりました。
「まちのことについて、こんなにじっくり話したのは今日が初めて」 、最後に藤井さんが漏らしたこの言葉。いろんな人がまちに関わるようになったからこそ、賑わいは日常の何気ない会話から育っていくものなのかもしれません。
<今回登場したお店や団体>
※ 当記事は、ナゴヤ商店街オープンvol.6から誕生した「かさでらのまち編集室」(@edit.kasadera)が作成しています。