
名古屋市では、商店街やまちで活躍する人材の育成を目的とした講座「machico(マチコ)」を実施しています。
講座では、商店街やまちでの実践を重ねる講師陣とともに、現地視察やワークショップをおこない、まちを再生するためのプロセスやアプローチを学びます。これまでに誕生した修了生たちは、それぞれのまちで動き始め、まちに少しずつ変化をもたらしているようです。
そして2024年冬、マチコ四期生が修了し、新米マチコたちがまちに解き放たれました。各フィールドで思い思いの活動をしているマチコたち。講座での経験は、現在の活動にどのように活かされているのでしょうか?
そこで今回はマチコ四期生たちに集まってもらい、マチコを受講したきっかけや各々の挑戦についてお話を伺いました。
この日訪れたのは、名古屋市中村区の名古屋駅西銀座通り商店街にある「エキニシマーシャル」。レトロな商店街にあった空き家を活用した、“こどものあそび場、おとなのたまり場”とのこと。お店に入ると手前は駄菓子屋、奥は懐かしのレコードやCDが並ぶ、ちょい呑み酒場となっています。
この「エキニシマーシャル」は、マチコ四期生の稲垣さんが2025年春にオープンしたお店。普段からこのお店でよく呑んでいるという、四期生3人に集まってもらいました。
稲垣勝さんは現在、中小企業診断士として活躍しながら、この「エキニシマーシャル」を運営。お店の奥に「マーシャルオフィス」を構え、誰もがカジュアルに経営相談できる場を提供しています。山本明日香さんは、名古屋市西区の円頓寺商店街近くで、腸活・発酵をテーマとした料理教室と飲食店を運営し、またレンタルサロン事業も展開しています。佐藤俊介さんは栄でファッション関連のシェアアトリエを月額会員制で運営。自身もトートバッグなどの制作販売をおこなうほか、腕時計のカスタマイズや販売代行、ウェブライター、ピアニストなど幅広く活動しています。
山本:私は元々、岡崎で料理教室をやっていて。ほかにも名古屋の新栄でレンタルサロンを借りて、こちらでも料理教室をしていました。そんな岡崎と名古屋を行ったり来たりしているなかで円頓寺商店街に出合い、ここで自分のお店を持ちたいと強く思うように。那古野や円頓寺あたりで物件を探しているときに、マチコの募集を見かけました。ただ、それが募集締め切りの3日前で…
佐藤:ギリギリじゃん!
山本:そう、本当にギリギリ(笑)。物件探しが難航しているところだったので、マチコに参加することで何か情報をもらえたりしないかな?という思いから受講を決めて、急いで応募しました。自分のお店を持ちたいけれど、いろいろとわからないことだらけで。なんとか一歩踏み出したいなという気持ちでいるところマチコを知ったので、受講すれば勇気が持てるかな…と、自分に期待して参加しました。
佐藤:僕はたまたまInstagramでマチコの募集を見かけて。ちょうどそのころ、栄に縫製関係のアトリエを出すことを決めたところだったんです。栄は服飾関係の学校もあるし、商業施設も多い。ファッション関連の人がたくさん集まるまちだというのはわかっていたので、場所は栄に決めていました。そこで出合ったInstagramの投稿に心惹かれて。あ、もうこれは参加するしかないなと。ちょうど暇していましたし(笑)。
稲垣:私は、この名古屋駅西銀座通商店街あたりの出身でして。だんだんとシャッター街になっていくのを寂しく思っていました。会社を辞めて、年齢を重ねていくにつれ、地元に貢献したいという思いが芽生えてきて、中小企業診断士という仕事を通して地元の人たちと関わっていきたいなと考えるように。そこで、どうせならいろいろな人がふらっと立ち寄れるような店を構えて、誰でも相談に来てねという環境を作りたいなと画策していたところで、新聞でマチコを知りました。私が目指すのは、まさに商店街の再生だったので、受講を決めました。
これまでのマチコのプログラムでは、架空の商店街を舞台に、受講生たちがどのようにまちに人を呼び込むか、という内容を考え、発表してきました。しかし、四期では初めて実在する商店街に協力いただき、2グループに分かれてイベントを開催。過去のマチコでは最も実践的な体験をした四期生のみなさんが学んだことは、どんなことだったのでしょうか。
山本:今まで料理教室しかしてこなかったので、異業種の方々とのつながりが持てたというのは大きな成果です。また、年代が全然違う方もいたので、刺激ももらえました。あとは、私は出身が福井なので、あまりこちらの土地勘がなくて…。マチコは那古野周辺でのプロジェクトだったので、馴染みができたというか。この那古野で活動させてもらうことで、土地勘もできましたし、安心感も持てて、一歩踏み出す勇気になりましたね。
山本:私は円頓寺商店街の雰囲気がすごく好きで。絶対にここにお店を出すぞと決めていました。那古野とかあのあたりのレトロで温かい空気感が好きで、でも名古屋駅からも近くてアクセス抜群。料理教室の生徒さんは県外から来られる方も多いので、アクセスのよさも決め手の1つでしたね。また、マチコをきっかけに、新規事業の立ち上げのお仕事をしている方とも知り合えて。お店を作るまでにかなり相談に乗ってもらいました。
佐藤:僕の場合は、マチコを受講したことで、まちの要所となる人にアプローチする重要性を学びましたね。やっぱり、そのまちごとに、地に根付いている人がいたり、実はあの店のオーナーさんが業界に精通している人でね…っていうことが多いんです。そういうことは地元の人に聞いて、人づてで見つけていくものなんだなと。これらをマチコで学べたことは、今にかなり活かされています。ある種の営業っていう感じですかね。地元の人に声をかけて、提案をする。この地域とのコミュニケーションの取り方を体験できたことが、現在の集客やまちの人たちとの関係構築に役だっていますね。
稲垣:名古屋市立大学にも集客しに行ったよね。
佐藤:そうそう、僕はビデオ参加でしたけどね、あれ恥ずかしかった(笑)。マチコのプログラムで、商店街でイベントを開催するというものがありました。イベントを準備するなかで、地域の人に、商店街が抱えている問題だとか、昔の商店街はどうだった、何をしていたとかヒアリングをした上で内容を決めていきました。やっぱりまったく新しいことをやるより、地元に馴染みがあって、ちょっとだけ変わったことをやる方がいいよねという話になったのを覚えています。そういうヒアリングからソリューションの提案、かつ少し新しいこともやって、商店街に参加する人を呼び込むにはどうすればいいのかを学べたことは、ありがたかったです。
稲垣:私は、マチコでいろいろな商店街を回ったわけですが、やっぱり外野が「何かやりましょう!」「もっとこうしてみましょう!」とか言っても、なかなか変わらないんですよね。地元の人がそう思わないと、商店街が変わっていくことってなかなか難しいんです。それを痛感というか、勉強させてもらえたのは大きかったと思います。
佐藤:僕たちが提案しに行っても、建前しか喋ってくれないというか…。
稲垣:そう、やっぱりそこに暮らしている人たちですからね。他所の人は他所の人です。だったら、自分が育ってきたまちでやろうじゃないのと。改めて決意しました。それが一番正しいというか、効果的なやり方かなと思い、ここに店を構えて今があります。
名古屋駅西銀座通商店街、那古野(円頓寺)、栄、と、それぞれのまちで活躍している四期生の3人。マチコで学んだことを実践し、さらに進化していくみなさんが、これから挑戦したいことはなんなのでしょうか。
山本:今後はお弁当の販売や、マルシェ参加、ケータリングなどを展開していきたいなと考えています。私は、私が育成した生徒さんと一緒にお仕事がしたいなという思いがあって。やっぱり、お仕事をしている女性ってキラキラしていると思うんです。これからはもっと女性の笑顔を増やす活動をしていきたい。私と生徒さんたち、みんなで楽しめる活動をしていきたいと思っています。
佐藤:僕、実は飲食店をやりたいんです。人と人をつなぐ場所を作りたいんですよ。でも、飲食店って、飲食だけで生計建てるのは難しかったり…。だから僕は「求人BAR」的なお店を開きたい。壁にシールを貼るように求人がいっぱい貼ってあって、その掲載料だけで店が回るような。そこに求人を出している経営者さんと、求職者さんが集まって、面接ってわけじゃないけれどお互いが話せてマッチングできるような店を作りたいですね。もっと先の目標としては、栄に自社ビルを持つこと!3年以内に実現するために、今いろいろと動いているところです。
稲垣:私はね、もう58なのでね…(笑)。あと10年くらい、地元の人に頼られる中小企業診断士でいられたらな、と。
佐藤:何言ってるんですか!ずいぶんと弱気じゃないですか。
山本:そうですよ。10年なんてまだまだ。あと20年は頑張りましょう!
稲垣:20年か…。じゃああと20年を目標に、この場所で頑張ってみます。この「エキニシマーシャル」を通して、中小企業診断士という仕事をもっと地元の人に知ってもらって、気軽に相談してもらえるような存在になりたいですね。目指すは町医者です。「何かあったら稲垣さんに相談すれば大丈夫」と言ってもらえるような、そんな存在でいたいと思います。
インタビューのなかで、マチコでの思い出話や、同期の受講生の現在などの話でも大盛り上がりだった四期生の3人。「まちコーディネーター養成講座」を通して得た人と人とのつながりや、実践的な体験から学んだまちづくりの知識が、今後もみなさんの活動に役立ち、新たな挑戦につながっていくことを期待しています!